スウェーデンデザイン・手工芸・ファッション

 

デザイン&手工芸

多様性と曖昧な境界線――これこそ、スウェーデンのデザインシーンを見事に要約した言葉です。新しい世代のデザイナーたちは、単に実用的なものを作るのではなく、そこから物語を伝えたいと考えています。機能が感情と出会い、創造性の幅がかつてないほど広がります。そして、余計なものを削ぎ落としたIKEAのデザインに、新たなライバルが登場したのです。

Monica Förster_ monicaförster.seMonica Förster/monicaforster.se

 

多くのデザイナーは、カテゴリーにとらわれずに創作活動に取り組み、アートと手工芸とデザインを融合させています。モニカ・フォシュテルは、現代の都市生活からと同じくらいサーミ人の民族工芸からもインスピレーションを得ています。自身の作品であるミニマリズムの家具やオブジェに、思いもよらない素材や新しいテクニックを使い、なじみのある形状を生まれ変わらせているのです。さらに彼女は、消費文化とのバランスを取るには質の高いデザインが効果的であるとも考えています。

 

dfdfdesignfront.org

 

デザイン集団のフロントは調査の視点を持って活動しています。結束の固いデザインチームが、アイデアの考案から完成に至るまで協力して作品に取り組んでおり、外的な要因によってフォルムが決まることもよくあります。たとえば“Design by Animals”コレクションでは、壁紙をかじっている何匹ものネズミが壁紙の柄になっています。また“Flower Lamp”コレクションでは、家庭で消費するエネルギーの量によって、ランプのフォルムが変わるのです。

古くからの伝統を守り続けるガラス工房のコスタボダも、新たな分野を開拓しています。おそらく、周囲の創作意欲に刺激を受けたのでしょう。特大のゴブレットや巨大なガラス製のリップスティックなどを手がけたガラスアーティストのオーサ・ユングネリウスを獲得したことで、機能的というよりはユーモアにあふれ、高級というよりは表情豊かなデザインが加わりました。しかし、最も巧みにスタイルを融合させるのはサンドラ・アールでしょう。彼女は、ポップカルチャーと現代の消費社会の持つ表情をアートに取り入れます。すると、従来の美意識に挑んでいくキッチュなスタイルが生まれるのです。

 

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サンドラ・アールの作品は、これまで優勢だった機能主義からは程遠いものです。1930年のストックホルム博覧会で機能主義が大躍進を見せて以来、スウェーデンでは多かれ少なかれ、フォルムは機能によって決まってきました。今も一般的には、“スウェーデンデザイン”とは、ピュアなラインと白木と使いやすさが特徴であると考えられています。思うに、IKEAはこうした考え方とつながっているのでしょう。しかし実際のところ、事の発端は1919年、スウェーデンの美術史家であるグレゴール・パウルソンが書いた『もっと素敵な日用品を(Vackrare vardagsvara)』というパンフレットだったのです。彼は、国民により広く美しい品物を普及することの必要性を指摘しました。そしてこのことが、20世紀の大半の時期において、スウェーデンのデザインに非常に大きな影響を与えました。民主主義的、反エリート主義的なデザインをめぐるパウルソンの考え方は、今なお生き続けています。そして、優れたデザインはスウェーデンの日常生活において、極めて重要な役割を果たしているのです。

 

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家具デザイナーで建築家でもあるブルーノ・マットソンのモダニズム的デザインは、1930年代、40年代においては画期的なもので、スウェーデンが世界のデザイン界に進出するきっかけとなりました。そしてそれは、今も変わっていません。しかし、彼が作り上げた“スウェディッシュ・モダン”は、より情緒的なスタイルの挑戦を受けてきました。デザインは人となりを語るものであり、私たちの美の極致は今まさに再び評価されようとしているのです。

 

 

 

ファッション

スウェーデンのファッションは変わりつつあります。他の分野のデザイナーと同様に、多くのファッションデザイナーたちが機能性を追求するデザインから離れるようになりました。H&Mは今でも、誰もが手に入れられるファッションを世界各地に広め続けていますが、一部のトップデザイナーたちは、より個人的なものを表現する方向へと向かい始めています。

 

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サンドラ・バックルンドは、従来の実用的なスウェーデンファッションとは異なるスタイルで、世界のファッション界にその名を知らしめました。毛糸で作られたぜいたくで表情豊かな彼女の作品には、本物の熟練の技を見て取れます。

リッカルド・リンクヴィストも、まったく違う形ではありながら、やはり手工芸の意味合いを取り入れています。彼は、伝統的な仕立ての技術を用いて、古典的な紳士服のちょっと粋なバージョンを作り上げるのです。

スウェーデンのファッションシーンには創造性があふれています。その一方で、多くのデザイナーが自分の才能を利益にかえようと悪戦苦闘しています。ソフィー、ペニッラ、イェニファーのエルヴェステット3姉妹は、“ミニマーケット(Minimarket)”というブランドを立ち上げて成功を手にしました。彼女たちのコレクションは、女性らしいフォルムに男性的な要素を取り入れている点と、強烈な色づかいが多い点が特徴で、世界各地のショップで販売されています。

スウェーデン ファッション
Sofia Sabel/Imagebank.sweden.com
ファッション界でもエコデザインが好まれるようになりました。ヌーディー、カミラ・ノルバック、ジュリアンレッドなどのブランドは、いずれも環境意識の向上に貢献し、エコファッションでもクールになり得るのだということを証明しています。 実は、“スウェーデンファッションの奇跡”が始まったのはデニムの世界だったのです。アクネ、ヌーディー、WeSCなどのブランドは皆、世界的な成功を収めました。これに続くブランドのひとつ、チープマンデーも同様に知名度を上げ、たちまちH&Mに買収されました。

スウェーデン人のファッションへの関心は、この10年の間に急激に高まっています。H&Mがそこに一役買っていることは間違いありませんが、国民の経済状況が向上したことにも関連しているのでしょう。しかし、消費社会に対するひとつの反応として、中古市場の増加が挙げられます。昨年のオートクチュールが今年はストリートファッションになって登場する、なんてことがあるかもしれません。

 

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スウェーデン デザイン
Tuukka Ervasti/ imagebank.sweden.se

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